【BL感想】『ふったらどしゃぶり』(一穂ミチ著)を読んで
一穂ミチ先生の『ふったらどしゃぶり~When it rains, it pours~ 完全版 (ディアプラス文庫)』を読んだ感想を書いていきたいと思います。
大人向けな恋愛
一言で言えば、大人の女性向けの恋愛マンガに、BLをサンドしている感じ。
一般的なBLでは書かないような描写が多い作品というか、恋愛の醜い部分や人間のきれいとは呼べない部分が多く描写されている作品のように思いました。
著者の他の作品と比べてみても、ひと味違っているように思います。
なかでも、胸に突き刺さったのは異性愛の描写。
この作品では、同性愛と異性愛の両方が書かれていますが、さすがに著者が女性ということもあってか異性愛の描写はとくに現実的でリアリティがあります。
へたをすれば、メインの恋愛がのまれそうなくらいどろっとしていて、自分自身、少し痛みを抑えながら読んだ次第です。
心より身体
そして著者にしてはめずらしく、心より身体のつながりを大きく描く作品でした。
身体が先につながって、そのあとで心がついてくる。
このへん共感できるかできないかで、好き嫌いは分かれそうです。
エンターテインメントとして面白い
このように作品の中身やテーマはたぶん好き嫌いは分かれると思うのですが、エンターテインメント作品としてとても面白いです。
セリフのやりとりのリズムが良くて、コメディが入っていて楽しく読めますし、息をつく暇なく事件もぽんぽん起こって、気がついたら読み終わっていました。
なので、一般的なBLではあんまり書かれてないとか、身体が先だとか、そんなことを冷静にぐだぐだ考えられたのは、ある程度時間が経ってから。
スピンオフ作品も面白い
そしてこの『ふったらどしゃぶり』のスピンオフ作品『ナイトガーデン 完全版 (ディアプラス文庫)』も、とても良い。
『ふったらどしゃぶり』にも登場した藤澤和彰さんのお話です。
スピンオフ作品なのに、まるで恋愛の形が違います。
『ふったらどしゃぶり』が持つ者たちの大人の恋愛なら、『ナイトガーデン』は、はみ出し者がやっと辿り着いた愛でしょう。
エンターテインメント性や単純な面白さでいえば、『ふったらどしゃぶり』なのですが、恋愛のカタチとしては『ナイトガーデン』が好みですね。
まだ読んでない人は、彼のことが苦手でも、とりあえず読んでみてほしい。
おすすめです。