サバ屋のblog

BL小説の感想とか日記みたいなもの

【BL感想】『おとぎ話のゆくえ』(一穂ミチ著)を読んで

一穂ミチ先生の『おとぎ話のゆくえ (幻冬舎ルチル文庫)』についての感想を書いていきます。ネタバレはありません。



現実的で幻想的

『おとぎ話のゆくえ』というタイトルの通り、
主要キャラの2人の魅力や、彼らにまつわる設定、舞台、著者の文章、すべてが合わさって幻想的な作品でした。


あまりにのめり込んでしまいページをめくる手が止まらず、気づいたら読み終わっていた作品です。
たぶん、一穂ミチ先生の作品の中でも一、二を争うくらい個人的には好みかもしれません。


『幻想的』といっても、現実離れしているわけではなく、
世界のどこかに存在していてもいいような、説得力というか現実感というかそんなものがあります。


現実世界を書いているのに、美しい別世界を見ているように感じる。
ファンタジーのように美しいのに、現実的。

『is in you』という作品にも同じ空気を感じます。この作品もとても好き。


下ネタセリフも多いのに、物語全体の空気で浄化してしまうくらい、本当にすべてのシーンが美しいです。

キャラクターが物語の一部

そしてキャラクターも魅力的です。

主人公は「ん?」と思うような発言や行動をとるタイプなので、最初は受け入れるのが難しかったのですが、
物語が進むにつれ、だんだん魅力がわかって好きになっていきました。 

5回くらい再読してわかったんですが、この人、下ネタバンバン言うくせに、だらしないところたくさんあるくせに、めちゃくちゃ品があるんですよね。

とる行動や愛し方に品があって、綺麗で、おそろしいくらい優しい。

しかもそれが、自分に自信がないとか、弱さからくるものじゃないところが、なおいい。

好きになっていく過程が好き

それから、2人が惹かれ合っていく過程がとても好きです。

たまたま偶然、近くに現れたから、というんじゃなく、
出会うべくして出会った、というのがしっくりきます。
あくまで私の想像ですが、この2人はどこでどんな形で出会ったとしても、出会った瞬間から互いに惹かれ合っていく運命なんじゃないかと思う。
それがたとえ不幸への道だとしても。

良い意味で主張しすぎないキャラクター

個性的なキャラクター達によってぐいぐい読ませる作品もありますが、この作品のキャラクターは(個性はあるけれど)良い意味で主張しすぎません。

そこにいる感じ、といいますか。人間味があるといいますか。

物語の舞台とキャラクターがマッチしすぎていて、キャラクターが物語全体を彩る欠かせないパーツのように機能していて、ただひたすら美しいです。