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【BL感想】『藍より甘く』を読んで

一穂ミチ先生の『藍より甘く (幻冬舎ルチル文庫)』を読みました。

直接的なネタバレはありませんが、展開を匂わせる部分もあるので未読の方は本編を読むことを推奨。

 

静かでやさしい恋と友情

初めて読んだときはあまりピンとこなかったのに、読めば読むほど味わい出て好きになった作品です。

(今では著者の作品の中でも、五本の指に入るほど好きな作品です。)

 

メイン2人の性格や関係性、距離感みたいなものがとても良いです。

上辺だけ見れば「萌え」の一言で終わりそうですが、読み直して一つ一つ文章を拾っていくと、もともと友達だった2人だからこその、言葉のやりとりとか、行動とか、たまらない。

端々から『仲のよさ』を感じられます。

どちらも共通して優しくて、一方は臆病で、一方は相手を思いやって悩む。

深いところまで落ちるわけでもなく水面でゆらゆらつかず離れず。

子どもの恋愛のように勢い任せで薄っぺらいようで、そうでもなく。

これが本当にいい。

 

ピンとこなかったのもそれ

最初にピンとこなかったのも、この『関係性』が原因だと思います。

何か大きな伏線があって回収されるとか、物語全体にあっと驚くような大胆な展開があるとかではない。

恋愛以外の、仕事や学業の描写もほとんどない。

キャラクターの魅力・行動・関係性に全振りされた作品。

だから最初はピンと来ないけど、読めば読むほど、ムダがないぶん、キャラクターが浮き彫りになって味わい深くなる。

大げさすぎる展開がないところにも、リアリティを感じます。

ひたすら恋愛に重点を置いた少女漫画を読んでいる感じ。

 

後半にゆくにつれ

あと途中まで葛藤の嵐だったのに、後半にゆくにつれ思い悩まないところが良いです。

男前で、ラブラブ。

あとがき後に収録されていた、ショートストーリーもとにかく可愛かったですね。

ペーパー・バック 1 [新聞社シリーズ《番外編》] (幻冬舎ルチル文庫)を読んでいるときのように癒されました。

 

大学生ものっていいな、と

改めて『学生もの』っていいなと改めて思いました。

この作品は『大学生』のお話ですが、大学生っていいですね。

少し自立できていて(一人暮らし・バイト)、

恋愛を味わう時間もあって、

学校という縛りが少しだけ残っている、ところとか。

マンガだと大学を舞台にした作品って少ない気がします。

あるにはあるけれど、『大学生』という舞台や設定自体にぐっとくるかというとどうなんだろう。ハチクロくらい?  

  

というか、この作品の『大学生』が好きなのかもしれません。

必要以上に大学生活についての描写がないので、自分の中で大学生像をある程度自由に決められて、入り込みやすかったです。

頭の中で好きに補完するかんじ。

女性向け漫画の背景があまり描写されないのと似てるかも。