サバ屋のblog

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【BL感想】『青を抱く』を読むか迷っている人へ

一穂ミチ先生の『青を抱く (フルール文庫 ブルーライン)』を読みました。

 

アマゾンのレビューはそこまでよくないようだけど、好き

この作品は買おうかどうか迷った作品です。

なぜかというと、他の作品に比べるとアマゾンのレビューや評価はそこまで……というかんじで。辛辣な意見もあったり。 

そんな中で迷いつつ買ってみたのですが、実際に読んでみると、低評価をする人の気持ちもわからないでもない。

ですが個人的には、そんな部分も気にならないくらい、はるかに楽しめた作品でした。

私なら5をつけるかと。

 

なぜ楽しめたか

なぜ楽しめたのかというと、理由は3つあります。

  1. テンポ・リズムが好み
  2. 描写が美しい
  3. 主人公がとにかく可愛い

 

①テンポが好み 

まずテンポというか、テンションというか、リズムが好みだということ。

「テンポが好み」とは何かというと、一穂ミチ先生の作品は、ざっくり分けると2種類ありますよね。 

『イエスかノーか半分か』『ひつじの鍵』のようなテンポが速く、テンション高めのコメディ作品。

『さみしさのレシピ』『アロー』のような、ゆったりとしたテンポと、繊細かつ美しい人物や背景の描写があるドラマ作品。

 

前者だろうが後者だろうが楽しく読めますが、より好みなのは後者のほうです。

良く言えば繊細な、悪く言えばちょいと胃にくるような重めの作品が好き。

 

そしてこの作品は、後者です。

ゆっくり、繊細、少し重め。

ぽつぽつとしたセリフの置き方、ゆっくりで急がない風景やキャラクターの丁寧な描写が本当に心地いいです。

「重いのは勘弁して」という人もいるのかもしれませんが、個人的にはたまりませんでした。

 

②水の描写が美しい

2つ目は描写。

この作品では、タイトルにもある『青』

……というか、『水』に関する描写というか表現がたくさん散りばめられています。

といっても、この作品に限らず一穂先生の作品には、自然を最大限に美しく描く文章があります。

 

でもなぜこの作品を勧めるかというと、他作品に比べてもとくに自然の描写が多いほうだと思うからです。

ちゃんと調べたわけではないので、感覚的なものですが。

『ふったらどしゃぶり』とか『キス』とか、一穂先生の中でもふとした自然の描写が好きな人には、読んで損はないかと思います。

 

③主人公がとにかく可愛い

3つ目、これはさらに個人的な好みですが、主人公がとにかく可愛い。

言葉も、行動も、考え方も、可愛い。

存在しているだけで可愛い。

多くを語らないのに、心を許した相手にはどんどんなついて、言うことを聞いてしまうところとか。けれど、ときどき素直になれずに突っぱねてしまうところとか。

あまりに好みなものだから、行動を観察しているだけでも飽きなかったです。

 

かなり近いのは『is in you』『ステノグラフィカ 』の主人公です。

この系統の子が好きなんだなと思う。

「あざとさ」だけでいえば超えてるんじゃないだろうか。

自分の基準からすると、たぶん一番あざとい。(褒め言葉)

 

読みましょ

まとめると、読みましょ、ってことで。

とはいえ、まったく一穂先生の作品を読んだことのない人には多分すすめないとは思います。

『イエスかノーか半分か』、もしくは『シュガーギルド』あたりをプレゼントするかもしれません。

 

ただ、すでにファンで、何冊か読んだことある人なら、ぜひとも。

とくに『is in you』から始まる新聞社シリーズや、『やさしさのレシピ』のような少し重めの作品が好きな人、

『おとぎ話のゆくえ』『アロー』のような細かな人間描写、

『ふったらどしゃぶり』のような美しい水の表現が好きな人は読んで損はないでしょう。